伊豆大島 DAY1
伊豆大島へは確か3回目の渡航です。主要観光地のいくつかは行ったこともあることだし、今回は大島在住4年目の友人Kちゃんとゆっくりしっぽり、島民のいつもの休日スタイルをお裾分けしてもらえたらいいな、くらいのゆるさで出かけました。
ですが、あいにくお天気は穏やかならず、台風1号が小笠原沖を通過したばかり。東海汽船のジェット船は渡航前々日は欠航、前日は条件付き運航。「出るには出てみるけど、着けなかったら引き返すよ」という一番悲しいやつ。揺れるだけ揺れて、航行時間は2倍ですよ、それは避けたい。
定期船の運航は、島民にとっては交通手段であり、生活必需品の物資輸送ルートでもあり、超重要ファクター。1週間前から運航を予測するアプリがあるそうです。それによると、1週間前からどうやらヤバい日らしい、今から別の日にスケジュール変えた方がいいのか、いやギリギリまで待とう、さて当日どうなる、と長いことやきもきしましたが、朝7時の時点で条件付き運航、9時には条件付き解除。つまり港に入れると確定。やったー!
しかし船がギリギリ出られるくらいで、うねりはかなり残っている予想。実際、東京湾フェリーは欠航して、吹き流しも荒れ模様を預言しているかのようでした。
さて今回は初めて久里浜港を利用してみました。肉声が通るくらいのこじんまりした待合室にはレトロな扇風機。行政区は横須賀市、横須賀名物海軍カレーはマストです。以前勤めていたクルーズのシェフが海上自衛隊のご出身で、長い海上では曜日感覚がなくなるので、毎週金曜はカレーが海自の伝統なんだと教えてもらったことがあります。
関係者以外立入禁止っぽいゲートを通過して、岸壁へ。
着岸シーンが真正面から撮れて大興奮。この映像はなかなか撮れないのですよ。東京・竹芝や横浜・大桟橋では立ち入り禁止エリア、熱海や諸島では近くまでは行けるけど、指定の場所に列で並ばされているのでこんなに間近では絶対撮れない。そして東海汽船のキャプテンって、ほんっとに、操船技術が高い。ギャングウェイの場所に寸分狂いなく着岸してますよね。。。そしてギャングウェイの高さ調整が手巻き。潮位は時間帯、大潮とか小潮とかでも大きく違いますから、調整は必須。はー、この3分でいくらでもしゃべれます。
座席でシートベルト着用して、いざ出港。全然揺れなくてつまらない。。。とうつらうつらしながら、思い出しました。伊豆七島は黒潮にさらされているけど、大島だけは、伊豆半島が流れを遮ってくれて、うねりの影響が少ないのだということ。だから、今回も利島以南は欠航だったけど、大島航路だけは運航したのでした。
大型客船が東京湾を出港すると、揺れ方がわかるタイミングがいくつかあって、一番大きいインパクトで横からどーん!とぶつけてくるのが、この伊豆半島を通過する時なんですね。(物心つく前からこの航路だけは何十回と乗ってきたので時間とか外とか見なくても体感でどこらへんかだいたい分かります)。これがクルーズ最初の「洗礼」で、適応しきれない人たちがキャビンからパブリックスペースに「避難」して、どうにか揺れないところを体で探して、一カ所に固まってくるのです。自分が乗り物酔いするタイプだから、「生息地域」も「出没時間帯」もよくわかります。出航後の船に乗る時はだいたい、自主的に船内パトロールして酔える子羊たちのケアをしていました。酔いやすい人は、見知らぬ環境や人間関係への緊張も手伝ってることが多いです。話してるだけでも気分がほぐれてきたり、お互いに乗り物酔いのツボを揉みあったりしながらしばらく話してる間になんとなく揺れにも慣れてきて、キャビンに戻ってようやく眠る、そんなクルーズ初夜を一緒に過ごした人たちはずっと仲がいいという印象があります。わたしもこの1日しか会っていないのにずっと覚えてていただいて嬉しかったことも。
「船って、揺れないの?」って、よく聞かれますが、揺れます。船だもん。だけど、慣れます。酔う時は酔う。酔わない時は酔わない。酔うかな・・・とか心配しないで、海に揺られてればいいんです。逆らいようがないんです。身を任せる、それだけだと思うなぁ。
岡田港でKちゃんが待っててくれました!来たよぉぉ!!
下船した皆とは逆方向の駐車場へ。それだけでなんだか楽しい。Kちゃんの車に乗り込んで、さて出発!とエンジンをかけようとしたら、キーが回らない!こんなことってある??ここまで乗ってきたのに?とオトナ女子2人で大騒ぎ。こういう時はメカニック男性に頼ろう!とKちゃんのお知り合いに電話すると、ものの5分で飛んできてくれて、普通にエンジンかけて颯爽と帰って行かれました。なんだったんだろう?神がわたしをハマダさん(仮)に会わせたかったのか?既婚者だけど、若いころちょっとやんちゃしてた風だけど、めちゃくちゃかっこよかったなぁ、ハマダさん(仮)。
実用的な能力のある男性はかっこいい、といつも素直に思う。ごめん、わからないって言える男性もめちゃくちゃかっこいい。ごめんって言えない、わかったふりするって、男性生来の基本装備なのか?とオトコノコを育て、男性初期のサンプルを数見てきて、つくづく思います。でも、わかったふりして取り繕うより、ごめんわからない、自分どうすればいい?って降参してくれたら、歩み寄ってくれたら、とんでもなくかっこいいのに。とは思うけど、難しいのかもしれないね。
さてようやく大島散策へ出発!
まずは、ぶらっとハウスへ。
野菜の直売所です。規模は大きくないけど、とても新鮮でリーズナブル、島民に頼りにされてるのがよくわかります。良心価格のスナップエンドウと、珍しい「シドケ」をいただきました。お店の方にクセが強い葉っぱと言われましたが、アシタバ好き!と言うと、じゃあ大丈夫ね、とGOサイン。アシタバとシドケ、類似植物が危険なのも共通。先日江ノ島でアシタバと思って生でかじった葉っぱが「そっくりさん」で、辛くて苦くてえらい目に遭いました。シドケの別名はモミジガサ、類似植物はヤマトリカブト(有毒)。
島を半周して、波浮港へ向かいます。
途中、過去2万年の地層の大断面、通称バームクーヘンを通過。花盛り、華やか。
波浮港(はぶみなと)は川端康成の『伊豆の踊子』ゆかりの地であり、伊豆七島からの漁船の寄り合い、避難所として栄えた港町でもあります。今も風情のある古民家が立ち並ぶ、お散歩が楽しい街。
その一角の HAV CAFE さんは、コロナ禍にオープンした、トラベルジャーナリスト寺田直子さんのお店。こんな素敵なカフェを知らなかったなんて、と思い返して、前回の大島ステイから早4年近くが経ってしまっていたことに気が付く。好きなものから、気がついたら遠くなってしまった、でもそういう中でもしなやかに花開いている人もいらっしゃるんだなぁと本当に勇気づけられます。およそ90か国を巡って集めたという店内の誂えは、本当に好きなものだけが宿す静謐さと温かさに満ちていて、自分の人生にこういうセレクトができるって憧れる。寺田さん自ら淹れて下さったハンドドリップのコーヒーをいただきながら、どういう方かわからないまま、すっかりファンになっていました。分厚くスライスしたサラミがたくさん載ったピザトーストも名物とのこと。また、絶対来る。その約束のつもりで、寺田さんがドイツで買い付けたという馬蹄のチャームを購入しました。コードを通してネックレスもいいし、馬柄の生地のがま口につけてもいいかもしれない。ああ、楽しみ。そう思いながら、HAV CAFEのお店情報を探していたら、寺田さんの連載エッセイに行き当たりました。奥行と主張のある、お好きだという「固めのプリン並みのゆるぎなさ」そのまんまの、甘くてほろ苦い、大人の文章。行きつけのカフェに、ではなく、アンリちゃんを寺田さんに会わせたくて、と連れてきてくれたKちゃんの思いがまたうれしかった。
HAV CAFEさんの数軒先にある老舗の港鮨 さん。天丼、伊勢海老、どれも美味しそうですが、ここは地魚握りランチを。天然物のかんぱち金目にめじなをお刺身で、って倒れそうな贅沢です。大島名物のべっこう握りは、2貫だけ追加で注文。べっこうは大島の青唐辛子を漬け込んだお醤油に新鮮なお魚を漬けた「べっこう色」の名物。うちで作ってみたことがあるけど、このツヤが出ないのはべっこう醤油をケチってたからかと思っていましたが、ネタの脂の乗り具合、新鮮度のせいかしら。
めじまぐろ あかいか あじ
いわし ほうぼう なわきり(くろしびかます) と めだいのべっこう。
またぐるっと半周ドライブして、北へ向かいます。
島ぐらしカフェChigoo Hagoo(ちぐはぐ)は素敵な女性ふたりが経営する泊まれるカフェ。期間限定のフリーマーケットを開催中とのこと。お洋服や子供用品、生活用品も多種多様。そして、状態がとても良好。島では物が手に入りにくいから、皆大切に使う文化があるのかもしれません。要らなくなったものを捨てないで島の中で循環させたくて、という趣旨に全面的に協力したくなってしまったわたし。お洋服の売れ行きが…と相談を受け、アイテムを組み合わせての展示はどうかと話してみたところ、センス抜群なコーディネートで爆売れしたそう。わたしたちが楽しんでやりました!って雰囲気が漂っていて、これは買っちゃうなぁ。。。わたしも断捨離中なのについワンピース買っちゃいました。インスタも雰囲気あります。
Kちゃんの投稿でよく出てくるワインのお店に連れてってとお願いして、WINE-ISLANDS さんへ。
オーナーさんの蔵書の一角にChileという洋書が目に留まりました。チリのワイナリーのコンチャイトロにクルーズのツアー添乗で行ったことがあります、とお伝えしたところ、オーナーさんも同じワイナリーに研修で行かれたとのこと!業者さんしか入れてもらえないエリアの貴重な写真を見せていただきながら、ひとしきりチリ談義。まさか大島でこんな話をすることになるとは思わなかった。けどそんなことが旅の醍醐味。
養蜂もされていて、季節ごとの花の蜜を試食させていただきました。春は爽やかな紅茶風味、夏の花は強くメントールのような印象。秋は色も味も濃厚でパンチが効いていて、それぞれの美味しさがあります。もうすぐサクラの蜜が採れるとのことですが、まずは昨春2021年のサツキをいただくことに。大島のサツキは小ぶりで色鮮やかなせいか、蜜も華やかな印象がありました。
ようやく、本日お世話になる ペンションみなもと さんへ到着。一旦チェックインしてお隣のホテル赤門で露天風呂。港で18:15のサンセットを満喫して、門限の18:30の5分前に宿に到着。充実しすぎてます。
さて、ごはんです。みなもとさんはごはんがおいしいと有名ですが、ボリュームはもちろん、おもてなしの熱量がすごいのです。おなかはいっぱいだけど、お気持ちがもったいなくて残せない。でもどうしても入らなくて、少しだけごめんなさいしてしまいました。わたし今日だけもう1人いたらいいのに。そしたら全部食べられるのにね。
夜もいただけた珍しい「くろしびかます」、お刺身では皮を取っていましたが、尾頭付きの状態はちょっと古代魚っぽい。細かい骨に包丁が丁寧に入っていて、鱧みたいでした。この捌き方見たら、自分ではちょっと太刀打ちできないな。捌いていただけて、本当にありがたいです。
ぱんぱんのおなかを抱えて、ベッドでゴロゴロしながら女子トーク。からの、お土産のガラスペンでお絵描きして遊ぼうと思ったら。なんと1本ポッキリと折れていました…ショック。Kちゃんが描いてるのを見ながら、わたしはインクを直接指につけて描いて遊んでました。絵にはコンプレックスがあって、ペンよりも指で描く方が気楽で好きかもしれない。そんなリラックスした話から、近未来の楽しい計画が生まれました。2本一緒に梱包していたのに1本だけ折れてたのは、この話をするための道標だったんだなぁ。神の采配見たり。
こんなドキドキする話ししちゃって、眠れるかなぁと言いながらお部屋に引き上げて行ったKちゃん。大丈夫、大丈夫。不安って、ほんとに進むべき方向ってことだもの。こういう熱の源泉を見せてもらえる瞬間って、生きててよかったなと思えます。わたしの方こそ、眠れるかしら。
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